Interview
【インタビュー】SZNO活動2周年|音楽クリエイター・中居 廉インタビュー
2024年8月、突如デビューを飾ったシンガーの「SZNO(ヨミ:スズノ)」。二次元の姿と三次元の姿を往復する多彩な表現者としてこれまで5曲のオリジナル楽曲がリリースされた。まだまだ希少な多次元を舞台としたシティアーティストであるSZNOは、表現方法以前にいまだ本質を捉えにくい謎めいた存在だ。POPからバラードまで多様な音楽性を通して、耳馴染みの良い音を届ける半面、「センター街で『蜷ク陦?鬯シ』に会うと『虜』にされるらしい」という怪しげでインパクトのあるキャッチフレーズを筆頭に、朝が嫌いだったり、口に『繝輔ぃ繝ォ繝�ぅ』があったり、SZNO自身に秘められた本質は思ったよりも深い場所にある。
活動が始まって2年が経つタイミングで、SZNOが彩る物語のフェーズ2が始まろうとしている。
今回は、これまでリリースした「xx」「flag」「21g」「またね」のオリジナル楽曲に焦点を当て、音楽を担当する音楽クリエイターの中居廉氏に話を聞き、ストーリーの振り返りとSZNOに秘められた謎を紐解いていく。

取材・文:森山ド・ロ
「xx」には、吸血鬼的なモチーフが多く散りばめられている
――率直な質問になってしまうのですが、SZNOさんは何者なのでしょうか?また、どのような存在なのでしょうか。
2024年のオリジナル曲4曲と、2025年の「欲しい」を経て、SZNOというキャラクター像が少し変化してきたと感じています。2024年の作品では、悩んでいる若い子たちに手を差し伸べ、導くような存在でした。もちろん「欲しい」もその側面はありますが、加えて二面性と言いますか、少しダークな部分まで描かれるようになりました。
ピクチャーボイスドラマ『渋谷反転』では、SZNO自身が困難に立ち向かうストーリーになっていて、誰かの手を引くというより、自分が走り出すタイプのキャラクターとして描かれています。導き手としての側面に加え、力強く前に進んでいく姿も見えてきて、キャラクターの輪郭がよりはっきりする展開になると思います。
ピクチャーボイスドラマ『渋谷反転』第1話
――なるほど。設定として大きくは公表していないものの、「吸血鬼」という要素がベースにあると思います。その上で音楽活動を通して変化が出てきている、という認識で合っていますか?
そうですね。楽曲や朗読から読み取れる「長く生きている」という部分も、吸血鬼由来だと僕も捉えています。音楽やストーリーを通して、具体的な行動や言葉がどんどん補完され、キャラクター像が深まってきたという感覚です。
――SZNOさんが吸血鬼というのは謎解き要素のひとつだと思うんですが、どのあたりにその “ヒント” が散りばめられているのでしょう?
2024年の時点で、すでに多くのヒントを入れています。特に1曲目「xx」には、吸血鬼的なモチーフが多く散りばめられているので、そこから紐解いていくこともできます。次回の楽曲では、吸血鬼的な側面をより強くしたいという意図があり、さらに核心に近づけるような内容になっています。
――『欲しい』でより謎の解明ができると?
はい。「欲しい」は答え合わせというほどではありませんが、あえてわかりやすい表現をしています。ストーリーのネタバレになりますが、吸血鬼としての側面をより強く持った「闇SZNO」のような存在が登場するんです。本来のSZNOはこれまで通りのキャラクターで、その二人が対になるような形です。楽曲だけを先に聴くと「SZNOって吸血鬼だったんだ」で終わりますが、ストーリーを読んだ上で歌詞を見ると「これは闇SZNOのことを言っているのかも」と読み解けるようになっています。
――楽曲以外に吸血鬼とわかるようなヒントはありますか?
2024年は、楽曲以外にも朗読形式のストーリーをYouTubeで公開していて、そこにも吸血鬼を匂わせる要素が多く含まれています。公開されている4本すべてにヒントはありますが、だんだん濃くなっていく構成なので、通しで観てもらうと理解が深まるはずです。
歌詞ではSZNOの思想や本質的な部分を表現したい
――それではこれまでリリースした楽曲についてお聞きしたいです。
1曲目である「xx(バイバイ)」は、どのような楽曲でどのような仕掛けがありますか?
1曲目にリリースした「xx(バイバイ)」には、たくさんの仕掛けが散りばめられています。
タイトルの「xx(バイバイ)」の「×」には複数の意味があるんです。SZNOは、自己否定しがちな若い子を救うキャラクターなんですが、歌詞の中で「ばってんの半分をもらう」という表現があります。自己否定の「×」を上下に割って、その下半分だけをSZNOがもらう、そうするとハートの形になるんです。これがひとつの謎解き要素です。さらに、歌詞に出てくる「v」を愛と読ませていて、これもハートの意味に繋がっています。
――「xx」は1曲目にして、SZNOさんを紐解く上でかなり重要な楽曲なんですね。
そうですね。「xx」は、SZNOを理解する上で重要な1曲だと思っています。他の曲は「誰かとの関係」や「過去」を描いたものですが、「xx」だけはSZNO自身に完全にフォーカスしています。
――2曲目の「flag」はどうでしょう?
「flag」に謎解き要素はほとんどありません。
SZNOが「どこで歌っているのか」を考えると、地下のライブハウスのような場所で夜な夜な歌っているのかな、というイメージで作った楽曲になっています。
――では、次に「21g」について。タイトルからして意味が深そうなのですが、「21g」にはどんな意味があるのでしょうか?
タイトルの「21g」は、魂の重さと言われる数字が由来です。
ダンカン・マクドゥーガルという医師が 「魂に重量はあるのか」を調べるため、亡くなる直前の人を体重計に乗せ、息を引き取った瞬間の変化を計測した、という話があります。その際に 21グラム減ったという記録が残っているらしく、それが元ネタになっています。
――なるほど。歌詞の中にある「消える」や「溶ける」といった表現もそれに関連しているんですね。
歌詞の中で「溶けてゆく」「消えてしまわぬように」という言葉が多く出てきますし、21グラムという言葉も、どこか粉のように溶けていきそうなイメージがあると思うんです。自分の中で魂のありかを考えたときに、21グラムがただ消えるのではなく、世界や人の心に溶け込んでいくんじゃないかと。質量保存の法則のように、魂もきっとどこかに分散して存在しているはずだと感じていて、そこから着想を得て、「21g」というタイトルに決めました。
――長く生きているSZNOさんならではの表現だなと感じました。
SZNOは長生きしているので、人が死んでいく姿を何度も見てきたはずなんです。その中で「特別な人」に出会ったことで、死に対して初めて意味を考えるようになったと解釈しています。それまでは、人間が自分より先に死ぬのは当たり前だと思っていたけれど、そうじゃないと気づいたというストーリーです。
――なるほど。1曲目、2曲目とは雰囲気が大きく違って、かなり深いテーマになっていますね。言うならSZNOさんの本質に触れているような。
そうですね。この曲を書く前に、楽曲に紐づくストーリー(「Story for "21g"」)をいただいたんですね。それがSZNOにとってとても大切な過去の話だったので、歌詞ではSZNOの思想や本質的な部分を表現したいと思いました。
――落とし込みが本当にすごいです。ほかに「21g」で注目してほしい部分はありますか?
サビの部分には特にこだわっています。例えば1番のサビだと、「あなたの迷いないその笑顔が きらめくような朝をくれた」や、「柔らかな言葉たちが 眠れないあの夜をくれた」といった歌詞があります。これらは21グラムが世界に溶けているという表現で、「あなたの魂は世界に溶けていて、自分は今もその一部に触れている」という意味を込めています。
――すごく人間的というか、温かさを感じますね。
まさにSZNOの人間らしさを感じてもらえたら嬉しいです。
――では、次は「またね」について教えてください。
「またね」は、「xx」のアンサーソングという位置づけが前提にあります。タイトルもリンクしていて、「バイバイ」に対する「またね」という関係です。そして「xx」は夜の曲でしたが、「またね」は吸血鬼らしくない朝のイメージで作りたくて。夜が明けていくタイミングを描いた、早朝の雰囲気を意識しています。
――吸血鬼にとって朝がどう作用するのか、という部分とも繋がる感じですね。アンサーになっている箇所はどの部分でしょう?
タイトルはもちろんですが、歌詞の一番最後にある「Hide and seek
Catch night breeze...」というフレーズが鍵です。実はこのフレーズは「xx」のイントロにも存在していて、音としては入っているけれど、歌詞には載っていないんです。意図的に聴けば気づくくらいの処理にしていて、それが最後の曲「またね」で回収される仕掛けになっています。
――最後の歌詞、気づきませんでした。そもそも、なぜアンサーソングを作ることになったんですか?
最初の会議で、「1曲目と最後の曲がループするような構造になると面白いよね」という話が出たんです。それを受けて、僕はまず最後の曲「またね」から書き始めました。ワンコーラスを固めてから、他の曲に移っていった感じですね。
――普通に考えると、始まりである「xx」のほうが書きやすそうに感じてしまいます。
実際は「xx」が一番時間がかかりました。SZNOさんのデビュー曲になりますし、妥協できない部分も多かったので。やりたい表現や遊びも多くて、それを丁寧に形にしていく作業に時間がかかりましたね。
――なるほど。ファンの方の反応を見ていても、楽曲ごとにSZNOさんの解像度が上がってるような印象はありました。それでも謎解き的な仕掛けに気づいていない人も意外と多いのかなって。これから楽曲を通してSZNOさんの解像度を上げていくうえで、どの楽曲から触れていけばいいでしょう?
やはり「xx」ですね。仕掛けの要素が最も多く、世界観の入口として一番広がりがあると思います。
僕の意図を超えて全部見つけてくれる人がいたらすごく嬉しいです
――朗読と楽曲は、どちらを先に聞くのがベストですか?
楽曲を先に聴くのが良いと思っています。
朗読はより細かい部分を補完してくれる役割で、まずは楽曲で世界観の大枠を感じてもらい、さらに深く知りたい方に朗読を楽しんでもらえると嬉しいです。
――ほかに楽曲で謎解き的な仕掛け、「ここ気づいてほしい」というポイントはありますか?
気づいてほしいという点で話すと、「またね」には一つ大きな仕掛けがあります。実は1番と2番で視点が変わるようになっているんです。
1番は基本的にSZNO自身の視点ですが、2番はSZNOに救われた側の視点になっています。言葉遣いを絶妙に変えて、自然にそう感じられるようにしていますが、気づかれていない方も多いかもしれません。
――言われると確かにそうですね。どういう意図で視点を変えたのでしょう?
最後の曲ということもありますが、SZNOのコンセプトとして「悩める子たちを救うキャラクター」でありたい、という思いがありました。その中で「救われた側がどう歩み出すか」という瞬間をいつか書きたいと思っていて、ただそれを長々描くと冗長になるので、踏み出す瞬間にSZNOに向き合っていた子が、背を向けて歩き出す瞬間だけを切り取って表現しました。
――朝というのも、SZNOにとっては別れの象徴になっていますもんね。
そうですね。夜が終わり、歩き出す時間というイメージです。
――他にありますか?
「またね」の2番に出てくる「手を引かれて歩いた日も 歓声の中、見上げた日も 心の奥に触れた日も」という歌詞があるんですが、それぞれオリジナル曲の1~3曲目を表すようになっています。
手を引かれて歩き始めたのが「xx」。周りの歓声の中でSZNOを見上げるのが「flag」。SZNOの心の奥に触れるのが「21g」。
そんな対応関係になっているのですが、これは完全に自己満足なので、伝わらなくてもいいと思っています......(笑)。
――これはさすがに言われないと気づけないですね(笑)。ライブハウス的な情景も重なるし、面白いです。書く時、知ってほしい要素と分からなくてもいい要素って混在しているんですか?
両方あります。これは気づいてほしいと思って書く部分と、気づかれなくてもいいやと思って遊んでいる部分もあります。もちろん、僕の意図を超えて全部見つけてくれる人がいたらすごく嬉しいです。
――ちなみに楽曲面で、歌詞や意味とは関係ない作り手としての仕掛けはありますか?
あります。「21g」を書いたとき、ストーリーが先にあったのはさっきお話しした通りなんですが、構成面で「ABサビでセクション転調させたい」というアイデアが最初からあったんです。「21g」はまさにその構成で作っています。曲が進むにつれて景色が変わるように、意図的に転調して遊んでいます。
――どういう意図で転調を入れたのでしょう?
物語の「心の奥底」を扱う曲なので、もっとドラマチックにしたかったんです。さらっと終わらせず、感情がうねるような印象になるように、あえて転調を多くしています。
――なるほど。そもそも楽曲のジャンルや雰囲気は、どの段階で決めているんですか?
そこは企画のかなり初期段階で共有されていました。運営スタッフや朗読パートの脚本を書いていた脚本家の方がいて、彼らから「この曲はだいたいこういうイメージで」というリファレンス音源をいくつかいただいていたんです。その上で、僕自身の「この曲はこんな方向性が合うと思う」という意見を出して、ディスカッションしながら固めていきました。
――じゃあ、基本的にはどのジャンルでも可能だったわけですね?
そうですね。最初から4曲はあえてジャンルをバラバラにしようという意識がありました。実際、4曲ともかなり雰囲気が違っていると思います。
――最後にSZNOさんの活動部分についての話をしたいのですが、そもそもなぜ音楽をやっているのでしょう?
2024年の3曲目「21g」の裏テーマでも語られていますが、SZNOは昔、ある恩人に出会って、いろんな楽しいことを教えてもらったというストーリーがあります。それがきっかけで、今度は自分が周りの人を元気にできる存在になりたいと歩き出しました。SZNOが歌う理由は、僕としてはそこにあるのかなと思っています。
――なるほど。受け手の解釈に委ねられている部分でもあるんですね。
そうですね。それぞれに自分なりの解釈をしていただいて楽しんでほしいです。
SZNO Original Songs List
https://youtube.com/playlist?list=PLUE_7v4TvnVG17IIZVuj4CjZpxNZr7Cb6&si=_HOpucP55cHvFCKW
■Information
5th Single「欲しい」(ピクチャーボイスドラマ『渋谷反転』テーマソング)配信中
■ピクチャーボイスドラマ『渋谷反転』とは
SZNO YouTubeチャンネルにて全6話配信中配信
配信先(SZNO Youtubeチャンネル): https://www.youtube.com/@szno_xx
【STAFF】
世界観/キャラクター原案協力:じん
キャラクターデザイン:りたお (PHASE STUDIO)
シナリオ:黒木久勝
音響ディレクター:水島精二
制作:Hifumi,Inc.
製作:SZNO project (バンダイナムコミュージックライブ、ミュージックレイン)
【キャスト】
SZNO:SZNO
ユノ:ユノ・ミハナダ
リリカ:月魅暁りりか
ミウ:氷猫みう
ロイロ:闇依ろいろ
ネムミ:温々ねむみ
熊乃:熊乃ベアトリーチェ
クロネ:夜羽咲クロネ
コウモリ:中村 繪里子
【ストーリー】
表と影、二つの渋谷。 その影に潜む不穏な存在が暗躍し、人々に恐怖と負の感情を植え付けていた。
そんな中、アイドルグループ「Spark★Twinkle(スパーク★ツインクル)」のメンバー・ユノが突然意識不明に陥る。
次に目を覚ますと、彼女は街並みが左右反転した異世界「影渋谷」にいた。
絶望の底で泣き崩れるユノの前に現れたのは──不思議な少女SZNO。
「泣いてる子、みーっけ」
影渋谷に隠された真実とは。 そして、SZNOの正体と目的とは――。
謎が謎を呼ぶ物語が、今、闇の中で動き出す。
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